歯を磨くタイミングはいつがいいの?
2025/04/30
食後、すぐに歯を磨いた方がいいか?少し時間を置いてから歯を磨いた方がいいか?実際、歯をどのタイミングで磨いたらいいのか色々な説があります。日頃、患者さんと向き合う中で「歯はいつみがいたらいいですか?食事後すぐに磨くと歯を痛めることがあって・・・」と聞かれることがたびたびあります。私はいつも「磨けるときに磨くのがベストです。食事後すぐでもかまいません。」とお答えしています。
確かに「食後すぐ歯を磨くと、歯の表面が傷つく」という内容が示されている論文も一部では、存在します。これは、「歯の象牙質」の酸に対する抵抗性を調べた実験についての論文です。実験では、炭酸飲料に象牙質の破片をつけると、象牙質が弱くなることが示されています。
炭酸飲料は酸性でpH5程度です。歯にダメージが出やすいpHは、5.5以下といわれていますので、炭酸飲料を飲むと歯の表面が溶けて、傷つきやすくなるわけです。
ちなみにpHは低ければ低いほど、酸性度が強く、歯へのダメージは表れやすくなります。この実験ではさらに、炭酸飲料でダメージを受けた象牙質の破片を、30分以上、口に含んでいると、唾液の作用で象牙質が再び強くなることが示されています。唾液には緩衝作用があり、酸を中和する働きがあるのです。
実験の結果から、「食後30分以上してから歯磨きしたほうがいい」と言われるようになったのですが、この実験が示しているのはあくまでも、「炭酸飲料を飲んだ直後に歯を磨くと、歯を痛めやすい(歯の象牙質を傷つけやすい)ということです。こういった内容の論文があることは確かですが、実際の口の中は実験室とは環境が大きく異なります。
歯の構造は内側に象牙質があり、その象牙質の周囲には、象牙質よりもはるかに頑丈なエナメル質があり、象牙質を保護しています。また、炭酸飲料のような酸性の食べ物ばかりをいつも食べているわけではありません。こうしたことを考慮すると、‘‘食後すぐに歯を磨くことで歯を傷つけてしまう‘‘のはとても小さなリスクと言えます。むしろ食後すぐ歯を磨くことで、口のなかの汚れを落とし、むし歯菌や歯周病菌が繁殖しにくい環境をつくるメリットのほうがはるかに大きいと思われます。歯を磨いて口の中が清潔でいる時間が長ければ長いほど、菌の繁殖を抑えられ、逆にいえば、食後時間があけばあくほど菌が繁殖しやすくなるので、虫歯や歯周病のリスクが上がるとも考えられます。
時間を気にするあまり、歯磨きをするタイミングを失ってしまうようであれば、食後すぐに歯を磨いて少しでも長く口内を清潔な環境に整え、トラブルを防ぎましょう。